マダム・コマです。
今回皆さんに紹介する映画は『死ぬまでにしたい10のこと』。この映画は、女の奥底に眠る本心が込められた恋愛ドラマ。きっと女としてあり続けたい女性の心に響くことでしょう!
『死ぬまでにしたい10のこと』ストーリー
失業中の夫と幼い二人の娘と暮らしていたアンは、腹痛で病院に運ばれる。検査の結果、ガンであることがわかり余命二か月と宣告された。しかしこの事を誰にも話さず、深夜のコーヒーショップで『死ぬまでにしたい事』を綴り、10個となったしたいことを死を迎えるまでに一つずつ実行していくのだった…。
『死ぬまでにしたいこと』のリストに見る本音
ストーリーをザっと書いてみたけれど、主人公のアンは17歳という若さで妊娠し、夜間に大学の清掃員をしながら子供2人を育て、夫は失業中。それでも愛する家族のために必死で働き、23歳で倒れ余命宣告を受けてしまうという…なんとも切なすぎるお話です。
まだまだ若くてやりたい事もイッパイあるはずなのに、幼い子供2人を育て、一家を支える強さや責任感は年齢に関係ない。
「母は強し!」
「女は強い!」
いつの時代もこの言葉は世界共通…なのかもしれませんね。
そして余命宣告を受けたアンは、コーヒーショップで『死ぬまでにしたいこと』をリストにしていきます。
- 娘たちに毎日愛していると言う
- 娘たちの気に入る新しいママを探す
- 娘たちが18になるまで誕生日のメッセージを送る
- 家族4人でビーチに行く
- 好きなだけお酒とタバコを楽しむ
- 思っていることを話す
- 夫以外の人と付き合ってみる
- 男性を夢中にさせる
- 刑務所のパパに会う
- 爪と髪形を変える
どうですか? このリスト。
1~4は家族のために『最高のママ』としてやりたいこと。そして5~10は『自分のため』にやりたいこと。
嘘偽りなく家族にも自分にも、愛に溢れている50/50の内容。
7、8は身勝手だけど、女性であることの象徴。これこそ、女の一生なのかもしれないと思ってしまう。
私だったら…健康診断の検査結果を見るのさえ怖いくらいなので、もしもガンで余命宣告されてしまったらパニックになって、あれこれ考えているうちに余命2ヶ月の最終日。死ぬ間際になって、「あぁ、これやっておけば良かったな…」とやりたい事と思い出が走馬灯のように巡っていくのかもしれない。
ワガママは女の特権!? アンの心の声から人生のターニングポイントを考えさせられる
アンはある日コインランドリーで、リーという男性から話しかけられる。
リーはコーヒーショップでアンを見かけてから気になっていて、コインランドリーで眠ってしまったアンにジャケットと電話番号が書かれた本を渡します。
この時点で、リストの『8.男性を夢中にさせる』を達成、『7.夫以外の人と付き合ってみる』に大きくリーチとなるわけですね。
『死ぬまでにしたいこと』を実行していくアンは、思うようにいかず家族と喧嘩をしてしまったある日、子供を隣人に任せリーの家に行ってしまう。そして次第に心を通わせていく。
この作品には、大胆なセックスシーンは出てきません。アンは病人ですしね。
それでも…キスシーンはセックスシーンに勝るほど美しい!!
“これぞ愛"と思えるような、とても深い心の通い合いを感じます。
不倫は許されない行為。この作品を見た人のレビューには、「不倫は理解できない」「絶対ダメ」というご意見も多かったけれど、私は「そう!それでイイじゃない!!」と思った。
恋愛や結婚において「あの時、こうしていたら」とか「別の人と一緒になっていたら」と考えることってありませんか?
もしも別の人生だったら…というターニングポイントを振り返ること、私は大いにあります。
目の前に死が迫っているアン。これまで苦労してきたんですもの「女としてまっとうしたい!」っていうアンの心の声が聞こえるようで、余命を誰にも話せないのと同じくらい胸に秘めた思いを叶えて欲しいと思ってしまったんです。
じゃあ、もしも、自分が夫の「アンじゃない方」の立場だったら?二人の関係を許す?
無理。絶対に許さない!!認めない!!(笑)
自分の恋人や夫に死が迫っていようとも、何としてでも2人の関係を叩き潰すでしょう!
そんなのワガママすぎる!ズルい!自分勝手!と言われようが、ワガママなのは女の特権。最後まで女でいたいと思うじゃない!まさしく、女は女であるとはこのことです。
あなたの『死ぬまでにしたい10のこと』は何ですか?
この作品の製作総指揮にいるペドロ・アルモドバルは、数々の映画祭で欲望や情熱、家族や個人のアイデンティティをテーマにした作品を多く製作し、自ら同性愛者であることを公言しているスペインの映画監督です。
カンヌ映画祭の審査員長を務めたり、愛を求める男女をテーマとした作品「男と女」(1966年)でカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞するなど、人間の欲望の描き方に多くのファンが魅了されているんですね。
『死ぬまでにしたい10のこと』は、ナレーションで主人公をyou(あなた)と代名詞を使い、映画を見ている人=you(あなた)が映画の主人公で、あなたの余命は2ヶ月なのです。と訴えかけ疑似体験できるようになっているんですよ。
映画を見ているうちに、自分がアンになって10のリストをひとつずつ実行しているかのようにどんどん引き込まれていきます。
フィクションだからここまで綺麗に描けるということの裏に、人間の欲望がリアルに描かれている『死ぬまでにしたい10のこと』。
理想と現実をまざまざと見せつけられているような、もしも自分が余命宣告されたら実行できるかどうかはさておき、絶対に人には見せることのないリスト。
私にもその時がくる日があるならば…嘘偽りのないアンのリストは参考にしたい。女でありつづけたい私の心に響く素晴らしい映画でした。
この記事を書いた人
恥じらいなんてケセラセラ! キャッチフレーズは“だってアバンギャルドなエロスは文化ですもの” 映画と煙草と珈琲の3点セットを愛し、漫画家・岡崎京子を敬愛するアラフォー。生まれ変わったら純文学に出てくるような乙女になることが夢。
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